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生きもの調査

田んぼの生きもの調査隊隊長
岩渕成紀先生
仙台市科学館の学芸員をしていましたが、田んぼに魅せられて宮城県田尻高校の生物の先生に転職。日本雁を保護する会のメンバー。自然と人との共生を考えている農業者のための生きもの調査のスタンダードづくりに取り組んでいます。

2004年6月、環境省自然環境局長賞受賞。現在「NPO法人田んぼ」理事長。

どこで、いつ、調査しているの?

メダカのがっこうでは「いのちを基準として」考え、行動することを基本理念としています。田んぼをいのちの視点から評価するために、いのちの種類と量とを数えよう、という「田んぼのいきもの調査」を2003年から毎年、生きもの調査のエキスパートである岩渕成紀先生に指導・監修のもとで、定期的に実施しています。

千葉県の佐原、新潟県の佐渡市、福島県の郡山市、岩手県江刺市、栃木県大田原市、福島県岩瀬市、栃木県茂木町、静岡県伊豆市の8カ所で、冬水の張ってある2月、田植が終わって草取りをする6月、稲の生育がさかんな8月、そして稲刈り直後に田に水を張り直したばかりのの10月の計4回行っています。

なぜ、調査しているの?

田んぼは本来、たくさんの生きものが生まれ、集まる場所でした。以前の田んぼや水路では、メダカを始め、ドジョウ、カエル、ホタル、トンボ、トキなど、たくさんの種類の生きものを見ることができました。しかし、最近では、あまり見られなくなっています。用排水路をコンクリート貼りにしたり、農薬を多用したり、汚水が流れこんだりするせいで、彼らの餌や産卵の場が無くなったり、自由に行き来できなくなったのが大きな原因です。

冬期湛水・不耕起田にすると、いなくなっていた生きものたちがすぐに帰って来てくれます。冬の間も水をはっているために、ユスリカやイトミミズなどの生きものが水の中で越冬する事が出来、それを食べる生きものたちがたくん集まってくれるからです。田んぼがひとつの生態系を築いています。それほど多くの生きものが働いてくれるからこそ、農薬や除草剤に頼らずに稲を育てることができるのです。こうしたつながりを実証するために、冬水田んぼ、有機栽培の田んぼ、防除歴に合った慣行農法の田んぼで結果を比較する調査を継続しています。

ここ数年の生きもの調査の結果で、冬期湛水・不耕起の田んぼには、慣行田とくらべて、イトミミズやユスリカの量が多い事がわかりました。ミミズは英語で「Earth Worm」(地球の虫)と言われるほど、地球の生態系に大きく関わっていて、ダーウィンもミミズの研究をしていました。しかし、私たちの生きもの調査はまだ始まったばかり。生きものの調査は、長い時間と多くの調査データが必要です。国土の多くを占める農地。生きものがいっぱいの環境になって欲しいと願っています。

水生生物調査を実施している様子
コドラートで田んぼの底の土をすくう。
生きものの数をカウントする
泥の間にさまざまな生きものが!

田んぼの生きもの調査の実施要領

1 田んぼの履歴調査
いつほ場整備をしたか、農薬をどれぐらい使ったか、何回耕したかといった田んぼの履歴で生きものの種類や量が変わってきます。これらを調べておくと、生きもの調査で得られたデータを比較するのに役立ちます。
2 生息環境調査
調査した日の天気、気温、水の温度、pH(酸度)、DO(溶存酸素量)、EC(電気伝導度)、ORP(酸化還元電位)などを測定します。田んぼ環境の健康診断ととらえることができます。各指標が何を見るのに役立つか、下に記しました。

■ pH(酸度)

田の水が酸性かアルカリ性かを調べます。藻類が多いと光合成をする際に酸を分解するので、アルカリ性に傾く。除草剤をまくと、藻類が死滅するために酸が分解されなくなるのと屍骸の酸とで、酸性に傾く。

■ DO(溶存酸素量)

水に溶け出している酸素の量。この値によって、どれだけ多くの水生生物が棲めるかが決まってくる。飽和溶存酸素量(およそ8mg/リットル)をこえた酸素は、田から空気中に放出され、CO2減少、地球温暖化に貢献することになる。

■ EC(電気伝導度)

電気を伝える物質がどのくらい溶け込んでいるかを示す。化学肥料を入れていると、その化学成分が電気は通すので、値は高くなる。清らかな水であれば、0に近い。田んぼには、0とまではいかず、多少の有機物でわずかな電気伝導度が0.2程度計測されるぐらいが理想的。

■ ORP(酸化還元電位)

土の中の酸化/還元の度合のこと。この値が+であれば、酸化されている状態。酸化状態からマイナス100ぐらいまでは、コナギ、マツバイなどの水生植物が繁茂しやすい環境。草の管理しやすさから言うと、マイナス150以下の強還元層であると望ましい。イトミミズやユスリカが噴き上げる糞によってトロトロ層ができていると、マイナスの度合いが高くなる。
田んぼでよく見かけるカエル図鑑
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緑色で目の淵が黒く、手に吸盤。ゲゲゲゲゲゲ・・・と鳴くのはアマガエル

茶色で背中に2本の線が入る。冬(2,3月)に産卵するニホンアカガエル

背中の中心に線が入り、グワッグワッグワッと鳴くのがトウキョウダルマガエル

ちょっと哲学者みたいなおもむきのシュレーゲルガエル
3カエルの調査
カエルは稲を枯らす虫などを食べてくれます。カエルがたくさん棲んでいることで、害虫が抑えられます。このカエルたちの多くも、水路の変化などのため、少なくなってきています。田んぼのあぜを一周して、見つけたカエルの種類と数をカウントします。あぜの草むらに隠れているので、あぜから追い出すよう、ゆっくり歩いて調べます。100mあたり何匹のカエルがいたかを計算します。

カエルを漢字で書くと「蛙」。畦にいる虫ということで蛙と名付けたのでしょう。田んぼでよく見られるのは、アマガエル(ニホンアマガエル)、アカガエル(ニホンアカガエル、ヤマアカガエル)、トウキョウダルマガエル(関東と仙台平野以外はトノサマガエル)の3種類。自然度が上がるとさらにシュレーゲルアオガエル、ツチガエルなどが出てきます。西日本にはヌマガエルが多いようですが、こちらは東日本では見ることが出来ません。田んぼ脇に森があり、大きなビオトープや溜池が木の下にあれば、木の上に卵を産むモリアオガエルが見られることも!

カエルを見ることで田んぼ周りの自然環境が見えてきますし、鳴き声を憶えると真っ暗な中、ホタルを観ながらカエルの種類を聞き分けたりも出来るので、更に楽しさ倍増です。
4 イトミミズ・ユスリカ調査
田んぼ東西南北の角と中央の計5カ所で、深さ10cm分の土を球根植え器で採取します。その土を魚用の網に入れ、バケツの水または小川で洗い流し、残ったワラなどをバット(トレー)に少しずつ分け、水を張ります。しばらくするとバットの中の生きもの達が元気に動き出すので、イトミミズとユスリカの数を記録していきます。4角の中間地点の5カ所を採取して平均を出し、25万倍すると、10アールあたりの生きものの数が得られます。

イトミミズやユスリカは、泥を飲み込み、その中の有機物や微生物を食べて、それらを無機化しています。こうしてできた栄養分は、稲が吸い込んで体に蓄え、人間やその他の生きものの食べ物にもなり、豊かな生態系を支える基盤にもなっています。
5 水生生物調査
田んぼ20×50の木枠コドラートを田んぼの稲の間にさしこみ、上から2~3センチの土を網ですくいあげ、バケツの水または小川で泥を洗い流し、残ったワラなどをバット(トレー)に少しずつ分け、水を張ります。数が多いミジンコなどは、バットを10等分した区画で数え、いくつかの区画の平均をとって10倍します。1万倍すると、10アールあたりの生きものの数が得られます。

水生生物調査は、見つけた生きものを全部記録していきますが、その種類が多種多様であるほど、豊かな生息環境であることが分かります。
5 クモ調査
田畑には沢山の種類のクモがいて、彼らはカエルと同じく、沢山の虫などを食べています。網を張る造網性のクモ、歩き回る徘徊性のクモに分類しながら種類を調べ、慣行田と不耕起田との違いを調べています。
6 植物調査
植物の調査もはじめました。植物はただ生えているのではなく、好みの環境に生えています。日陰が好き、湿った所でなきゃだめ、人の来ないところが良い・・など、植物は環境に正直です。植物を調べる事で、その場所の環境が調べられます。
左から スジブトハシリグモ、ハナグモ、ヤホシサヤヒメグモ、コガネグモ

ある日、ある田んぼの例

1.水田の概要 種類 耕さない・冬・水・田んぼ
周辺環境 丘陵地で北西側に森あり。
基肥 米糠40kg/10a、屑大豆60kg/10a
田植 5/27実施。成苗。50株/坪
水管理 深水管理、中干し無し
畦畔管理 草刈2回(最近の草刈は6/15)
防除資材 除草剤、殺虫剤、殺菌剤無し
2.生息環境調査 天気 晴れ
気温 29℃
水温 27.5℃
水深 9.5cm
pH 7.3
EC(電気伝導度) 9.4
DO(溶存酸素) 6.5
3.カエル調査 ニホンアマガエル 52.77匹/10a
ヤマアカガエル 94.98匹/10a
4.田んぼの水生生物 ミジンコ 40,000 匹/10a
ユスリカ 810,000匹/10a
イトミミズ 260,000匹/10a
ヒラマキミズマイマイ 246,000匹/10a
マツモムシ 360,000匹/10a
生きもの調査で活躍する「生きもの下敷き」
田んぼでよく見る生きものを、野外でも扱いやすいプラスチック製の下敷きにまとめました!それぞれの成虫と幼虫とを、実物大表示で見やすく対記してあります。


水生生物篇、クモ篇 各300円。ショップでお求めください!




  • その他 モノアラガイ、ヤマトシジミ、マルミズムシ、ミズアブ、ヒルなど
  • 田んぼの上を、アジアイトトンボが361.7匹/10a飛んでいたのを数えた
  • 田んぼの水面に、イチョウウキゴケ(絶滅危惧種)
  • クモの調査は別途


メダカのがっこうが、全国各地で季節ごとに行っている田んぼの生きもの調査に、参加できます!

田んぼの生きものたちや調査方法を実践の場で学べるだけでなく、環境を復元する農業を実践してきた農家、調査してきた研究者と触れ合う機会でもあります。田んぼに対する広い視野と田んぼを愛する心を育てるためにも、ぜひおでかけください!(日程、行程などについては「参加者募集」ブログでご確認ください)

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