「耕さない冬・水・田んぼ」の自然再生力
環境破壊、エネルギーの枯渇が叫ばれている今だからこそ、化学肥料や農薬もいらない「耕さない冬・水・田んぼ」が、自然再生のカギをにぎっています。そのわけについて、以下の7つの「なぜ?」を読んでください!

なぜ耕さなくていいの?
生きものや稲の根っこが耕すから、
人が耕さなくていい
普通の田んぼでは、機械で田を耕してから水を張り、田植えをしますが、「耕さない・冬・水・田んぼ」なら、水の中に棲む土壌動物やたくさんの菌たちが、冬の間から土を耕してくれます。イトミミズは機械で代かきするよりさらに柔らかい、ゲル状のトロトロ層を作ってくれます。 詳しくはこちら

左/前年の切り株が分解した後に残る「根穴構造」
右/野生化したイネの根っこ
「耕さない・冬・水・田んぼ」では、前年の切り株をそのまま残して田植えをします。前年の根は分解され、その根穴がスポンジ状になって残り、地中は耕したような状態になっています。また、普通の田んぼより地表面が硬いため、イネが野生化し、太い根を張りめぐらします。

なぜ農薬がいらないの?
野生化したイネは草や虫に負けないから

イネづくりで大切なことは、イネ自身の生命力を引き出し、農薬が必要ないくらい丈夫に育てることです。健康でいるのに「免疫力」が大切なのと同じです。そのために大切な技術は、5.5葉の成苗作りです。普通の田んぼでは2〜3葉の稚ない苗を数本ずつ植えます(稚苗の密植といいます)が、冬・水・田んぼでは根をしっかりと張れるよう、人間でいうと高校生くらいの苗にしてから、1〜2本ずつ植えます(成苗の疎植といいます)。

なぜ肥料がいらないの?
生きものたちが肥料を作ってくれるから
イトミミズをはじめとする水生生物の糞、水辺を頼ってやってくる野鳥の糞、藻類や水草、田の草などが枯れて分解したもの、窒素固定をする浮き草や、光合成細菌など、冬の間に田んぼの土を肥沃にしてくれるものが、たくさんいます。収穫前には田んぼの水を落としますが、田んぼに繁殖したメダカなどの多くは、田んぼの中で死んで肥料になります。
冬・水・田んぼにやってくるガンやハクチョウの糞にはリン酸がいっぱい!

なぜ除草剤がいらないの?
イトミミズ、藻類・水草が、
草を抑えてくれるから

前の年の切り株などから発生する藻類も、草を抑制してくれる
冬の田んぼに水を張ると、春草の種がイトミミズが吹き上げる糞によってできるトロトロ層にとじこめられ、発芽しにくくなります。また、田植え前にはすでに藻類や水草が湧き、太陽が射し込まなくなるので、発芽に光が必要な草は、生えにくくなります。

なぜ殺虫剤がいらないの?
クモとカエルが害虫を食べてくれるから
カエルのおなかの中を調べると、害虫の方が多い
冬・水・田んぼでは、2月の氷の下でも、イトミミズやユスリカなど、カエルやクモの餌となるの小動物がたくさん繁殖します。それらをエサに、カエルやクモが春の早い時期から田んぼでスタンバイしてくれるので、苗を虫から守ってくれます。

こういう田んぼが増えると、どう変わるの?
田んぼ環境が変わると、
日本の自然が再生します!
田を耕すことをやめ、冬も田に水を張るだけで、こんなに環境がよくなるんです!
冬に水を張っておくのがむずかしい場合
水の確保の問題、もぐらが穴を掘ることによる水抜けなど「耕さない田んぼ」はできても「冬・水」はむずかしい、という場合もあります。冬のあいだじゅう水を張ることができなくても、田んぼの排水口近くに通年ビオトープをもうけるなど、なるべく年間を通して生きものが活動できるような工夫を考えるとよいでしょう。
田んぼの水は落ちてしまってもわずかな水があれば、一部の生きものは越冬できる。- 1 たくさんの生きものたちが湧く
- 耕さないと、冬眠している生きものたち、産み付けられた卵などの床土を壊さないし、ワラも草もそのまま積み重なって微生物の住処となってくれるので、たくさんの生きものが早春から繁殖し、広く大きな田んぼの生態系が実現します。
2000年夏、16年間耕してない田んぼに、絶滅危惧種のメダカを入れたら、一ヶ月あまりで数万匹に増えました。その冬、田んぼに水を張ると、同じく絶滅危惧種のニホンアカガエルが戻ってきました。2月、3月に卵を産む彼らには、そこが貴重な産卵場所になったのです。絶滅危惧種の半数以上は水辺の生きものたち。今の日本は、田んぼの基盤整備も農業技術も乾田対応で、一年のうち3ヵ月半しか水が入っていないから、多くの生きものたちが激減したのです。日本の国土の7%を占めるが田んぼの作り方が環境復元の鍵を握ります。 - 2 メタンガスが減り、溶存酸素が増える
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耕す田んぼでは、ワラが土の中で分解するので、メタンガスが発生します。田んぼを耕さないと、ワラが水の中で分解して藻類が発生 し、その藻類が光合成で酸素をいっぱい吐き出します。「耕さない・冬・水・田んぼ」田んぼで採ったデータによると、一日のうち10時間近く、水の中の溶存酸素量が飽和点を超えていました。その結果、メタンガスは13分の1になるという調査結果があります。豊かな酸素が多くの生きものを養います。

藻のおかげで、通常の田んぼより酸素が豊富 - 3 水がきれいになる
- 生きものがたくさんの「耕さない・冬・水・田んぼ」では、生きものたちが有機物(汚れ)を食べ、糞を出し、イネが吸収しやすい栄養に変えるので、田に入る水よりも、出ていく水のほうがきれいになります。緩速ろ過浄化システムと同じですね。
■ 緩速ろ過浄化システムとは?
200年前のロンドンで、工場廃水で汚れたテムズ河の水を飲めるようにするために発明された生物濾過システムが「緩速ろ過」です。砂を敷いた池に水をゆっくりと流し入れ、ゆっくりろ過すると、汚れやバイ菌などが、池の底にいる生きものたちの餌となり、安全でおいしい水になるのです。池に発生する糸状藻類が光合成によって吐き出す酸素が、生きものたちを支えています。それまで毎年夏に流行していたコレラが出なくなり、またたく間にヨーロッパに普及しました。ロンドンの水道水は今でもこの緩速ろ過システムで浄化された、塩素消毒なしのおいしい水なのです。
1 藻類が水を浄化
2 汚れやばい菌を食べてくれる生きものたち

これは新しい技術なの?
古くて新しい農業技術
「耕さない・冬・水・田んぼ」
300年前、江戸時代の『会津農書』には「田冬水」という農技術が書かれています。「冬水をかけよ 岡田へごみたまり 土もくさりて能事そかし」という和歌が添えられています。ごみとは有機物のことでしょう。 ところが、今の日本の田んぼは、一年のうち3ヵ月半しか水が入っていません。春先に機械で田を耕し、化学肥料で地力をおぎない、草や虫を退治する農薬を使う米作りがあたりまえになっています。しかし、化石燃料やリン鉱石が枯渇すれば、化学肥料も農薬も、機械も作れなくなり、燃料もなくなってしまいます。環境破壊、エネルギーの枯渇が叫ばれている今こそ、この古の知恵を思い出す時ではないでしょうか?
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- ▶ 「耕さない冬・水・田んぼ」のレシピ
- ▶ 田に水を入れておくと、何がいいの?

