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「耕さない冬・水・田んぼ」のレシピ

「耕さない・冬・水・田んぼ」を実践する農家の方たちといっしょに一年間の大まかな流れを追ったレシピをつくりました。いつ頃、なにをしたらよいかは、その土地によるのであえて書いていませんが、耕さないことによって野生化するイネを育てる要点をつかんでいただければ幸いです。




1 冬・水張りと通年沼地づくり

冬の間の補い
水を入れる時に米ぬかやくず大豆、自家製堆肥を撒いておくとよいでしょう。ただし、冬に水を張って何年も経ち、土が肥沃になっている場合は肥料をやる必要はありません。
稲の切り株が残っている状態で、水を張る。

稲刈り直後から田んぼに水を入れ、冬の間中そのままにしておきます。生きものたちが地力ある土を作ってくれます。 冬・水・田んぼでも稲刈り前や中干しなど、水を抜く時があります。基盤整備された今の田んぼでは、水を抜かれた時に水生動物たちの行き場がないので、その時に備えて、あらかじめ田んぼの排水口付近に、通年沼地(ビオトープ)づくりをしておきます。ここを水苗代の場所としても利用できます。

2 温湯消毒と浸種

種は自家採取で!
買った種は消毒がしてあり、無農薬とはいえません。
耕さない・冬・水・田んぼで採取した種もみは、野生化したイネの根が最後まで種もみに栄養を注ぎ込むため、優秀な種になります。
お風呂場でできる。

引き続き、お風呂場で。

病原菌やイネセンガイセンチュウを防ぐため、前年の収穫後に塩水選、乾燥させた種もみをネットに入れ、60度のお湯に7〜10分つけ、すぐ水にとります。2〜4日間、ネットに入れてお風呂場に吊しておき、風呂後の湯気にあてる方法もあります。

その種もみをそのまま、陽の当たらない寒い場所で、10度以下の流水で20日間以上水に浸けます(10度を越えると、芽が出始めるので要注意!)。発芽抑制ホルモンであるアブシジンサンが溶けだし、発芽の時期がそろいます。



3 苗床の準備

山の土を鉄板の上で焼いて消毒し、自家製堆肥や液肥を入れて苗床の土を作るのが本格的なやり方です。農協や、農機具会社でも苗床の土は売っていますが、化学肥料が入っているので、民間稲作研究所などから有機認証の苗床の土を手に入れる方法もあります。


4 催芽

つん、つん!と白く出ているのが、芽!

20〜25℃の水温で3日ほど種もみを温め、白い芽が出かかる直前の状態にします。(一般の農法では32℃の温度をかけるようです)お風呂の残り湯の湯気で種もみを2〜4日温める方法もあります。



5 播種

ローラーで播いたところ。きれいに列に揃っている

田植えから50〜55日逆算した日に、苗箱に種もみをまきます。播種量は通常の半分、1箱当たり種もみ40〜70グラムです。これ以上密に蒔くと、栄養失調になって、4.5葉〜5葉の成苗に育ちません。播いたあと、水をかけ、覆土します。一坪あたり50株植えで、10アール当たり18〜20箱となります。


6 苗づくり

低温で、丈夫な成苗に育てます。ずっと田んぼで育てる、途中までビニールハウスで育てる、最後までビニールハウスで育てるの3通りのやり方があります。

イ.はじめから田んぼに入れて育てる(水苗代)
最初から最後まで、田んぼで育てるやり方。
ビニールハウスが用意できない場合でもできるやりかたです。平らにならした田んぼに苗箱を並べ、ビニールトンネルで覆い、防寒シートをかけ、55日以上かけてじっくり育てます。トロトロ層ができている田んぼならば、追肥はいりません。ただし、発芽が揃いにくいのが難点で、小規模・自給農家向きです。
ロ.2.5葉までビニールハウスで育てた後、田んぼに出す
田んぼで稚苗から成苗にじっくりと育ててから田植をする。
はじめの10日間はこまめにハウスのビニールを上げて風を入れ、ハウス内が25度以上にならないよう、温度管理をします。(慣行農法だと、30度以上の温度にしています)2.5葉になったら、田んぼに出して、一葉目の付け根まで水を入れ、40日以上かけてじっくり育てます。葉の状態を見て、2葉目より、3葉目、3葉目より4葉目が大きく育っていなかったり、一葉目から葉先が黄色くなってきた場合は、栄養失調なので、自家製堆肥の液肥、あるいは、有機認証の液肥を追肥します。
ハ.田植えの時までビニールハウスで育てる(プール育苗)
水口さんのように大面積で米づくりする場合、育苗箱の移動だけでも
大変な作業になるので、播種後、田植まで同じハウスの中で育てる。
通気や水管理を適切に行うには、技術と経験が必要。
ロと同じように25度以下にしたハウスで10日間かけて芽だしをします。この時、下には防水シートを敷いておきます。2.5葉になったら、ハウスのビニールはほとんど取ってしまい、一葉目の下まで水を張ります。田植えの時までは、田んぼに苗を持ち出しません。これをプール育苗といいます。追肥が必要です。


7 田植え

「薄田も千石」
欠株といって、苗が抜けてしまったところがあっても大丈夫。「薄田も千石、厚田も千石」というように、空間がある分大きく育ち、収穫量は変わりません。
成苗を疎植すると、およそこんな感じになります。

2〜3本ずつの成苗を、一坪あたり40〜50株ずつ、植えつけます。6〜7本ずつの稚苗を60〜80株と密植にする普通の田んぼと比べると、疎植なので最初見劣りしますが、風通しがよいため、病虫害に強く、太い根が張り、開帳型の葉がみるみる分けつし、大きくなっていきます。冬から水を張った場合は、トロトロ層ができているので、不耕起専用の切り溝ディスクのついた田植機でなく、普通の田植え機でも植えることができます。田植え後間をおかずに米ぬかとくず大豆を撒くと、肥料効果と抑草効果があります。


8 水管理

水の深さは、はじめのうちはひたひた、葉耳(葉の付け根)が基準となります。稲が大きくなってからは、雑草を抑制することを考えながら、水の深さの調節をします。つまり、陸の草が目立ってきたら10〜20cmの深水に、水の草が優勢になってきたらひたひたの浅水または水抜き、といった具合に、です。


9 草取り

手作業での草取りは、夏にかけての重労働。

除草剤を使わない田んぼでは、どうしてもイボクサ・セリ・オモダカ・コナギ・クログワイ・ヒエなど、イネ以外の水生の草がでてきます。なるべく根っこから抜きます。

メダカのがっこうでは、「ありがとう田んぼ」でお米をつくってくれている「花まる農家」応援のために、初夏から夏にかけて生きもの調査に行く時には、みんなで草取りのお手伝いをしてくるようにしています。


10 穂肥

稲穂が茎の中からスーッと伸びて来る。

出穂(しゅっすい)しはじめたら、自家製液肥、肌ぬか(無洗米にする過程で出るもの)など、有機の穂肥を撒きます。ただし、冬・水・田んぼの効果で、土が肥えている場合は、穂肥は必要ありません。与えると、栄養過多でイネが倒伏することもあります。




11 登熟を待つ

じっくり実らせて!
最近、新米を一日でも早く出そうということで、登熟を待たないで収穫する米づくりが増えてきているようですが、やはりじっくり実ったお米はおいしいものです。

1粒1粒の種もみに栄養を送る細いパイプ部分を枝梗(しこう)といい、ここが緑の間はまだイネが熟している途中(登熟期)です。登熟期が長いほど完熟して味もおいしくなり、収穫量も増えます。「耕さない冬・水・田んぼ」の成苗を疎植する方法では、通常より10〜15日登熟期が長くなります。

実るほど、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな


12 落水

稲刈り予定日の3週間ぐらい前には、田んぼの水を抜きます。水生生物の一部は通年沼地で生きながらえ、ほかは死んでイネの栄養となります。


13 稲刈り

稲刈り体験では、干す作業までします!
メダカのがっこうの田んぼ体験では、手刈りして結束した稲束を天日干しする作業をみんなでします。
茂木の棚田では「ハサ掛け」
岩手の伊藤さんの田んぼでは「棒掛け」。東北に行くと多いようです。
左/一気にモミにまでする「コンバイン」 中/稲束を自動的につくっていく「バインダー」 右/昔ながらの鎌での「手刈り」

枝梗が枯れてきたら、イネを刈ります。イネ刈りには「手刈り」「バインダー刈り」「コンバイン刈り」があり、場所や面積によって方法を選びます。鋸鎌でイネの根元を切り、束にして結び、干すという昔ながらの手刈り作業のうち、稲束をつくるところまでをしてくれるのがバインダー、稲束を作らず一気に脱穀までしてモミにしてしまうのがコンバインです。

大面積の場合にはコンバインを使いますが、量がそれほどでもない場合には、バインダー刈りか手刈りにして、できた稲束を天日乾燥させるのがお勧めです。天日乾燥の方法は、「はさ掛け」「棒掛け」など、地方によってさまざまです。晩秋の陽光をあびて自然に乾燥が進むだけでなく、イネが枯れきるまでの間、茎に残っていた栄養分がお米の一粒一粒を充実させ、よい味になります。

左/ウマと呼ばれる支えに稲を穂を下向けに掛ける「はさ掛け」 右/支え棒のまわりに稲を寝かせて井桁に組み上げる「棒掛け」

14 塩水選

卵がこれくらい浮く濃さの塩水でも沈むものだけを、種もみにします

収穫後すぐに、来春の苗作りにむけて、充実した種もみを選びましょう。苗作りをした時、比重計で1.17の塩水に、ざるに入れた種もみを浸して、浮いた種もみを除きます。さらに、こんどは比重1.15の塩水に浸して、浮いた種もみを除きます。(ちなみに、国や県の基準は比重1.13。それより1〜2ランク上の種もみを選んでいます) 沈んだものだけを種もみとして選び、日陰に広げてしっかりと乾かします。粒の大きさが揃っていると、発芽も苗の育ちも揃います。

水分が残っているとかびが出てしまうので、しっかり乾かしましょう!

塩水選で選んだ種もみは、風通しのよいところでよく乾かしてから保存します。



15 畦の補修と冬・水入れ

稲刈り後、水の入った茂木の棚田。

畦のこわれた部分を修理してから、田に冬・水を入れ、春までそのままにしておきます。これでイネづくりの1サイクルが、めぐりました!

切り株のワラから、藻類が発生する
稲刈り後に残った切り株やワラから、水に浸かると藻類が発生。藻類が光合成をはじめ、酸素を吐き出してくれます。鳥の餌場や休息場にもなるので、鳥の糞からリン酸も入ります。土中に鋤き込んでしまえば、酸素でなく、メダンガスが発生し悪臭を放ちます。鳥も来ることはありません。同じ稲ワラでも、正反対のはたらきになってしまうのです。
耕さない・冬・水田んぼでは、冬のうちから次のいのちのめぐりが始まっています!

■冬の田に水を張ることがむずかしい場合のアドバイス

基盤整備が完備されて、水もパイプラインで共同管理などという場合は、「冬・水・田んぼ」にできない場合があります。特に太平洋側の平坦地では「冬・水」ができない場合が多いものです。山間地ならば自然の湧き水を、日本海側では雨水や雪を利用することもできますが、それらができないとなると、用・排水路からのポンプアップか、井戸しか方法がなく、この場合、設備費と電気代がかかってしまいます。もぐらが穴をあけるために水がうまくためらないところもあります。そこで、「冬・水」がむずかしい地域の方のためのアドバイスをいくつかご紹介します。
1 水の解禁日に田んぼに水を入れる。
土の表面にボコボコと見えているのは、イトミミズが糞を吹き上げているところ。
関東だと4月10日前後にパイプラインの元が開かれ、水を田に引き入れることができるようになるので、直前に田んぼの春草を抜いておいてから、解禁日に水を入れます。水を張るのと同時に米ぬかを撒き、約1ヶ月間イトミミズに働いてもらいましょう。イトミミズの活動と糞のおかげで、耕さなくてもやわらかな「トロトロ層」ができます。
2 通年沼地(ビオトープ)を
通年沼地を田んぼの脇に作っておくと、田んぼの生きものの避難場所になるので、田んぼに水を入れた時に、一度に生態系を復活させることができます。ミジンコ、ユスリカ、イトミミズ、藻類、プランクトン、カエル、クモなどが一度に湧き、まるでサバンナの雨期のような賑わいになります!
3 抑草対策
藻類の発生などが「冬・水・田んぼ」よりはどうしても遅れるので、田植えと同時に、米ぬかやくず大豆を撒いて草を抑えます。
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