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田に水を入れておくと、何がいいの?

稲刈り後からずっと、田んぼに水を張っておきます

「耕さない・冬・水・田んぼ」では、稲刈りが終わったら、切り株は田んぼに残したまま水を張り、ずっとそのままにしておきます。イネの切り株やワラなどの有機物が水中で分解され、微生物や藻類がそこから発生し始めます。すると、それをエサにするさまざまな生きものたちが棲みついてくれるのです。

たくさんの生きものたちの排泄物や死骸は、土を豊かにし、イネを育ててくれるのです。冬の田んぼに水を張ったことで、ガン、白鳥などの渡り鳥が立ち寄ってくれる例もあります。彼らの糞にはたくさんのリンが含まれていて、施肥効果があります。

生きものたちのはたらきによる施肥・抑草効果

トロトロ層の正体は、イトミミズがゆらゆらと揺れながら絶え間なく噴き上げている糞だった!

たとえばイトミミズは10度以上でずっとはたらきつづけ有機物を分解しては自分のエネルギーにし、糞を噴き上げます。このはたらきは、人間が代掻きしてつくるよりもやわらかいトロトロ層をつくりだします。このトロトロ層や、早くから生える藻類のおかげで、春草の種が閉じこめられたり、発芽に必要な光や酸素が届かなかったりで、春草が生えにくくなる効果もあります。また、クモやカエルが乾田よりも早い時期から活動をはじめるので、害虫が発生しはじめる時に大いに活躍してくれます。

稲刈り後の田に水を張ることは、生きものたちの冬の生息環境を用意してあげることになりますが、それが人にとってもよいことをもたらす。すばらしい共生関係を「冬・水・田んぼ」がつくってくれるのです。

なぜ「乾田化」するの?
圃場の基盤整備は、それまでたくさんの小さな区画に分かれていた田を直線的で大きな単位にまとめ、暗渠排水などで排水機能を高める方向で進められました。その一番の狙いは、コンバインやトラクターなどの機械の作業効率を高めることにあります。また、乾田にすれば、水田から畑への転用を臨機応変にできます。国が推し進める減反政策と圃場整備とは、表裏一体の関係にあるのです。

いのちを枯らす「乾田」から、いのちを育む「水田」へ
圃場整備による乾田化に農薬の使用が加わり、人間にとっての効率はあがりましたが、田を棲息場所としてきた生きものたちにとっては、生きにくい環境となりました。田んぼに普通に生きていたメダカが、なぜ「絶滅危惧種」となってしまったのか。メダカのがっこうのサイトを通して、その背景をご理解いただき、いのちを育む田んぼを応援していただく気持ちになっていただければ!と願っています。

「冬・水・田んぼ」がなかなかしにくい理由

高校の先生でありながら耕さない冬・水・田んぼでの米づくりもしている遠藤則靖さんが撮影した、夕焼けの冬・水・田んぼ。このような美しい風景が、増えていきますように!

山水や湧き水を使える山間部の田んぼではよいのですが、基盤整備されていて用水がパイプラインで来る田んぼでは、水は共同管理で、稲刈り後から田植え前までの約8ヶ月間は、水を確保できません。排水路の水をポンプで汲み上げて田んぼに水を入れるしかないのですが、そのための機材や作業労働、高額の電気代がすべて農家の負担になっています。しかも、基盤整備の田んぼは暗渠排水といって田んぼの下から水を抜く仕組みになっているので、かなり水漏れもします。暗渠を閉めても完全ではありません。

仮に水が確保できたとしても、99%が冬のあいだは「乾田」となる状況下で、乾かしている隣の農家の田んぼに水が染み出すことは許されません。ですから、隣が排水路であるとか、自分の田んぼであるなど「隣に迷惑がかからない」条件が整っている田んぼでしか水が入れられないのが現状です。みんなと違うことをすることは精神的にもかなりエネルギーがいることでもあります。

環境用水として、防火用水として、渡り鳥の休み場として・・・「冬・水・田んぼ」について、生物資源を活かす農業用水という以上の、多岐にわたるメリットを数え上げることができます。このメリットを多くの関係者にご理解いただき、個々の農家の冬・水・田んぼを実践できる自由度があがることを、メダカのがっこうでは望んでいます。